食品だけじゃない異物混入! 原因と対策

“異物混入”騒動の幕開け

“異物混入”―本来そこにあるべきでないものが製品などから発見されること。

2014年12月、東日本地域を中心に販売されているカップ焼きそば「ペヤング ソースやきそば」に虫が混入していたとして、全品回収・生産停止という事態に陥りました。

ペヤング
(引用元:をきゅー.com

製造元である群馬県のまるか食品は当初製造工程での混入を否定していましたが、外部機関を通じての調査の結果、完全に否定することはできないとして前述の措置に踏み切りました。

1975年の発売以来、特に関東地方では「四角い顔!」「もういっちょいく?」などのCMで話題となった「ペヤング」。

ITメディアニュースが2013年の1年間をとおしてのカップ焼きそばシェア調査を行った結果では、特に関東地方で最大手日清食品の「UFO」や明星食品の「一平ちゃん」をおさえ、45%ものシェアを占めていたことがわかっています。

この騒動の2ヶ月前、原材料費の値上がりを受け、他のメーカーに追随する形でまるか食品も同製品の値上げを発表(日本経済新聞電子版 2014年10月17日より)。

本来であれば、年明け2015年1月には同製品シリーズ7品が5円から20円値上げされる筈……でした。

しかし、とあるネット民が公開したTwitterに端を発したこの騒動により、2014年12月11日には全商品の回収を発表、さらに数十億円を投入しての設備入れ替えを検討しているといいます。

ちなみに、まるか食品の年間売上高は2013年6月期で約80億円といわれており、その中で急遽数十億円の設備投資は普通に考えても「痛い」出費といえるでしょう。

問題発覚以降の対応の遅さに対してまるか食品への批判が集まる一方で、同時期に冷凍パスタに虫の一部分が混入していた日清食品に対しては、その初動対応を評価する声も大きく、大きな問題には発展しませんでした。

問題発覚後の初動対応で明暗が分かれたこの“騒動”ですが、しかしこれはまだ序章にしか過ぎなかったのです。

年末から年初にかけてさらに“大きな波”が押し寄せることになります。

 

“騒動”の本格化へ……。

ネット上ではこの“騒動”前後、すなわち年末あたりから既に発信され始めていましたが、まるか食品に続いて批判の矛先が向けられたのはマクドナルドでした。

人気商品チキンナゲットが消費期限切れの中国産鶏肉を使用していたなど、2014年は世間から大きな批判を浴びてきた同社。

2015年も、年明け早々次々と各地の店舗での“異物混入”が報道され、再び批判の矢面に立たされる形となりました。

ナゲットやデザートからプラスチック片やビニール、人の歯の一部と思われるモノが出てきたとのクレームが寄せられ、同社は1月7日に緊急記者会見を開催しました。

この件においても前述のまるか食品と同様に、代表CEOであるカサノバ氏が会見に出席しない、など事後対応への批判がネットを中心に巻き起こりました。

この前後の時期、他の食品事業者も同様の問題に直面します。

アサヒホールディングス傘下の和光堂が製造した乳児用食品に虫の一部分が混入していたことが判明し、同製品の自主回収を行う措置をとりました。

この相次ぐ食品製造業者の“異物混入”判明に対して、行政側も動きました。

厚生労働省が1月9日付で各地の保健所を監督する都道府県・市に対して、食品への異物混入防止を徹底するよう指導通知を出しました。
2015年1月9日 朝日新聞「異物混入『食品事業者は防止徹底を』 厚労省が通知」より)

しかしマスコミを中心に大きな批判が巻き起こる一方で、この“騒動” について冷静に見極めるべき、との意見も出始めます。

 2013年に農薬混入事件が起きたマルハニチロの第三者検証委員会で委員長を務めた奈良県立医科大学の今村知明教授(公衆衛生学)は「虫やプラスチック片の混入を完全に防ぐのは難しく、農薬の混入などとは分けて考えた方がいい」と話す。

さらに「消費者の反発を恐れて食品メーカーは回収を急ぐ傾向にあるが、その費用は商品の値段にはねかえりかねないし、捨てるにはもったいない食品も多い。消費者もメーカーも冷静になった方がいい」と指摘する。

2015年1月8日 朝日新聞「異物混入、マックに打撃 期限切れ鶏肉に続き」より)

“異物混入”という事態そのものは許されるものではないが、その対策がいかに難しいか。

虫

実際に筆者が何人かの外食産業に従事している(していた)関係者に聞いたところでも、その全員が作業中に“異物”を発見した経験を持っていました。

厨房

しかし、“騒動”になっていないだけ、または知らず知らずのうちに起きている“異物混入”が身の回りに存在していることがあるのはご存じでしょうか。

 

“異物混入”が問題視されているのは食品業界だけではない?

食品業界以外でも、“異物混入”に対し神経質に対応している業界は多々あります。

特に製造業は顕著で、そのなかの代表的なものの一つに「製紙」「印刷」業界があります。

製紙工場
(引用元:日本電設工業株式会社HP

どちらも「紙」を扱う業界ですが、昨今では、使用済みの紙、いわゆる古紙などから作られる「再生紙」の需要が伸びています。

地球温暖化防止、省エネといった環境に対する関心が高まりをうけ、貴重な森林資源を保護するという観点からもあらゆる場面で再生紙が利用されています。

リサイクル業者などを通して回収された古紙を薬品などで繊維状態に還元し、そこからあらためて製紙するのが「再生紙」です。

最近になってよく聞くようになった「再生紙」という言葉ですが、その歴史は意外と古く、紙が発明された時代、紀元前150年前後には使用されるようになっていたとも言われています。

日本では今から約1100年前、平安時代頃から使われていることが確認されています。

江戸時代には、再生紙をつくるための古紙を回収する専門業者も登場するようになりました。

昔は紙自体が高貴な人への貢ぎ物に使われたりするなど、貴重品だったので、安易に捨てることはできず、何回も使い回しをしていました。

当然ながら使い回してきた紙であるゆえ、その過程で本来の紙にはついていなかったような“異物”が付着してくる危険性は高まります。

さらにいえば、製紙作業そのものが、“異物”が混入する危険性を常にはらんでいます。

虫や糸くずなどの紙以外の繊維質が混入してしまクレームとなってしまったという話もよくあると聞きます。

紙の製造工程以外でも、印刷工程や製本工程などでは工場の塵・ゴミなどが混入することも多々あり、食品工場並の高度な管理システムを投入しているところも増えているといいます。

前述の業界以外では、通販などを取り仕切る物流業界でも“異物混入”には神経を使っています。

防塵カーテンの設置や作業員の帽子・手袋着用、携帯電話、アクセサリー類などの私物持ち込み厳禁の措置が行われている現場も多くあります。

梱包物の中に虫が入り込んでいた。

梱包作業者の私物や絆創膏、体液・体毛の一部が梱包物の中から見つかった。

このようなクレームは過去に実際にあったということで、現在においてもそれらを防止する措置として行われています。

 

知らず知らずのうちに行っている“異物混入”?

各業界で“異物混入”防止に向けて仕組みの整備や教育が行われているところですが、実は意外なところでも“異物混入”が問題視されています。

しかも、知らず知らずのうちに我々自身が“荷担”してしまっているかもしれないという。

それは……普段行っている「ゴミ出し」についてです。

ゴミ01

現在、家庭や事業所で出たゴミは、その大半が各自治体の処分ルールにしたがって分別収集されています。

基本的には「可燃ゴミ」「不燃ゴミ」「資源ゴミ」の3つに分けられますが、各自治体の方針(リサイクルに対する)により、発泡スチロールやプラスチックを分別するなど、分別内容の詳細は異なっています。

各種のゴミは、処分施設で焼却処理したうえで、金属類などの不燃物についてはそのまま、各地の処分場に埋め立て処理を行います。

現在大きな問題となっているのが、その最終処分できる場所がなくなってきているということです。

東京都の場合には、東京湾岸地域に埋め立て処理を行っていますが、利用できる面積は限られており、あと半世紀程度で限界に達する、との試算も出ています。(東京二十三区清掃一部事務組合HPより

埋立処分場
(引用元:東京都環境局HPより)

可能なものはリサイクルにまわすなどしてゴミの総量減量を図ることが、各地のゴミ処理行政共通の課題となっています。

効率的かつ確実に総量減量を行うためには、ゴミの分別対策は必至といえます。

が、実態はどうなっているのでしょうか。

清掃事業に関する報告書が各自治体単位で出されていますが、調査年度がまちまちになっています。

また、分別率(そのゴミが決められた分別方法で出されているか、という割合)の把握についても自治体の方針などが異なるため、必ずしも報告されているとは限りません。

そのなかから、東京都23区の一部の区では、限定的ながらも分別率についての報告が行われています。

平成24年度の江東区による報告では、可燃ゴミ75.8%、不燃ゴミ79%

平成22年度の杉並区による報告では、可燃ゴミ81.3%、不燃ゴミ82%

平成25年度の中央区による報告では、可燃ゴミ67.9%、不燃ゴミ68.8%

となっています。

中央区ではさらに、可燃・不燃ゴミ中に混入していたリサイクル可能物の比率についても発表しており、それぞれ16.6%、16.4%にのぼったということです。

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中央区のように居住人口が少なく(平成25年1月1日時点 12万8628人)どちらかといえば事業所などが多いところのみならず、江東区(同時点 48万271人)、杉並区(平成25年10月1日時点 54万1253人)のような住宅街の多い地域においても、2割近くの人が分別をちゃんと行っていないという結果になっています。

単純にゴミを出している人=住民という図式にはなりませんが、それでも“異物混入”に荷担してしまっている人の数は万単位になる計算になってしまいます。

ちなみに参考までに、食品の異物混入について、東京都保健福祉局に寄せられた苦情件数は、平成24年度で681件。

同年度の食品に関する全苦情件数が4544件となっており、割合としては14%。

総務省統計局が平成24年に調べた東京都の飲食に関わる業種の事業所数(飲食店から食品製造業などを含む)は466738件でした。

この数字からみると、全事業所の0.14%が異物混入に関わった、という計算になります。

直接的・時間的早期に健康被害が予想されるかもしれない「食品への異物混入」に対し、「ゴミの異物混入」については、目に見える形で健康被害に影響することはないかもしれません。

ただ、「混ざって入ってたって問題ない」というような意識自体は決して褒められるようなものではないことも確かです。

この最終処分のための分別作業へのコスト増になることはもちろんですし、このようなゴミ処理に対する安易な考えは不法投棄やそれにともなう環境汚染などの土壌になります。

 

 

あれだけ神経を使い、コンプライアンス・各種環境を整備しても発生してしまう「食品への異物混入」と、各自の認識で改善できる余地のある「ゴミ収集での異物混入」。

ゴミ02

前者ばかりがクローズアップされ、後者についての関心は……、という風潮があるように感じるのは私だけなのでしょうか。

両者は共通の土台にある問題のような気もするこの頃です。


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